「原稿」
先週、アメリカは、米軍が撃ち落とした気球は、中国が主導する大規模な国際スパイ作戦の一部であると発表した。
気球は2月4日、サウスカロライナ州沖の大西洋上で撃墜された。その頃、気球は米国内を移動していた。その途中、モンタナ州の核兵器を保管している空軍基地を含むいくつかの基地上空を飛行しているのが観測された。
米国当局は、中国が意図的に気球を米国領空に飛ばし、飛行船がスパイ活動を行う能力を持っていたと考えていると繰り返し述べている。
中国は、気球は無人の気象観測用飛行船で、風にあおられて進路を外れ、アメリカの領空に入ってしまったと発表している。中国当局は、米国がF22戦闘機から発射されたミサイルで気球を撃墜したのは過剰反応であると非難している。
この気球の撃墜以来、米軍機は米国とカナダの領土を移動しているのを発見した他の3つの未確認物体も撃墜している。国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は先週、これら3つの物体がスパイバルーンであると確認されていないものの、米国はその可能性を「排除できない」と述べた。
カービー氏は、米国は他の3つの高空飛行物体が周辺の民間航空機に危険を及ぼす可能性があったため、「慎重を期して」排除することを決定したと付け加えた。
米国当局は、このような気球は中国の他の情報収集プログラムに比べて「付加的な能力が限定的」であると指摘している。
では、気球によるスパイ活動はどの程度有効なのだろうか。専門家によれば、人工衛星などの情報収集手段と比較すると、気球はローテクに見えるかもしれないとのことだ。しかし、適切な技術ツールを装備すれば、有用な道具となり得るのだ。
スパイバルーンの歴史
歴史的に見ても、高空を飛ぶ気球はスパイ活動や軍事活動に使われることが多い。
第二次世界大戦中、日本軍はジェット気流を利用した気球でアメリカ領内に爆弾を投下した。気球による軍事的被害はなかった。しかし、その気球が北西部のオレゴン州の森に墜落し、数名の民間人が犠牲になった。
第二次世界大戦直後、米軍は展開型スパイ気球の利用を模索し始めた。それが「ジェネトリックス計画」と呼ばれる一連の作戦につながった。米国政府の資料によると、このプロジェクトは1950年代にソ連の支援地域上空に写真用気球を飛ばしたことが判明している。
どれくらいの高さを飛ぶのだろう?
スパイバルーンは一般に、民間航空便が飛ぶ上空24,000〜37,000mを飛行する。旅客機が12,000mより上空を飛ぶことはほとんどない。
気球と人工衛星の比較
2009年に米空軍の航空指揮幕僚学校に提出された報告書によると、人工衛星に対する気球の利点の1つは、より近い距離で広範囲の領域を観測できることである。また、気球は目標地点の上空でより長い時間を過ごすことができると報告されています。
また、専門家は、気球は展開するのに多くの費用がかからないと指摘しています。一方、人工衛星は、何億ドルもかかる複雑な宇宙打ち上げシステムを必要とします。
AI搭載?
ワシントンD.C.のマラソン・イニシアチブ政策センターで情報気球の専門家であるウィリアム・キムは、フランスの通信社AFPに対し、気球は撃墜が困難な貴重な観測手段であると述べた。
キム氏は、米国が撃墜した中国の気球は、通常の気象観測用気球に何らかの技術を付加したものである可能性が高いと述べた。気球の画像から、太陽電池で作動し、電子機器、誘導装置、データ収集能力を持っているようだと付け加えた。
キム氏は、この気球には人工知能(AI)技術が搭載されていると考えているという。これによって、大気中の空気の変化に応じて気球を誘導することが可能になる。「以前は、気球に綱をつけるか、あるいは気球を上昇させ、風が吹いているところへ行くだけでした」と、キム氏は語った。
また、気球は従来のレーダー装置では発見しにくいという利点もある。「気球は反射しない素材であり、金属ではありません。「だから、気球がかなり大きくなっても、気球そのものを検出するのは難しいのです。
Words in This Story
an abundance of caution – n. the fact that someone is being extremely careful to avoid a particular risk
capability – n. the ability to do something
advantage – n. condition that gives a greater chance of success
artificial intelligence – n. the development of computer systems that have the ability to perform work that normally requires human intelligence
tether – v. to tie something to a fixed place
reflect – v. to throw back something (heat, light or sound) without absorbing it
detect – v. to find something that is partly hidden or not clear
*This article has been edited and reprinted from VOA Learning English with permission from Voice of America (VOA) for use in English language materials.